松崎元賞「納戸の上の三角居」

  松崎元賞「納戸の上の三角居」

川中宗一郎さんコメント

みなさんこんにちは。ただいまご紹介にあずかりました川中宗一郎です。札幌にある北海道学園大学の大学院に通っています。よろしくお願いいたします。

題は「納戸の上の三角居」です。私は今回のフェーズフリーコンペにおいて、数ある日本の災害の中で一番身近な地震というものに着目しました。日本においては据え置き家具などの転倒による二次災害が相次いでいるので、家具転倒による二次災害を防ぐ家を今回のテーマとしました。

家の中にバラバラに置かれている家具を、建物中心部に大きな納戸をつくって集約させます。その大きな納戸をGLまで下げることによって、外と連続性を付け、納戸上を建物内の道として使います。この大きな納戸を生活の軸とするプランによって、納戸の上が安全な場になり、もしもの時の逃げ道の役割をします。

平面は基本的に一間のグリッドで組み、納戸を軸に、個室、寝室、共用の部分というようにスペースを区切ります。断面的には、個室の部分が1500mmGLから下がっており、共用部が800mm下がっているというかたちになります。全体が大きなワンルームとして緩やかにつながることによって、お互いの家族の中での存在を感じながら、もしもの時、家族みんなでこの納戸の上に一旦逃げてくる、もしくはそこから外に逃げ出す。ということができるような住宅を提案させていただきました。ありがとうございました。

松崎元先生講評

松崎です。川中さん、おめでとうございます。

私は普段、プロダクトデザイン、生活用品のデザインを中心にしておりますので、デザインの視点からのフェーズフリーというテーマで審査をさせていただきました。

これまでもここにいらっしゃる佐藤さんと一緒に、フェーズフリーという考え方の定義・概念とはどういうものであるか検討を続けてまいりました。この後のパネルディスカッションで少しお話しさせていただければと思います。

先ほど目黒先生からお話しがありました、メガネとコンタクトのように、住宅とか空間だけでは、なかなかこのフェーズフリーの世の中は実現しないのだろう。当然その製品、生活用品、設備機器ですとか、設備そのもの、システムそのもの、といったものについても可能性を広げて行きたいということで、こちらの作品、川中さんの作品が私から見ましたところ、新しい家具とか、先ほども申しました新しい設備ですとかの可能性を広げてくれるのではないかということでこの作品を選ばせていただきました。おめでとうございます。

パネルディスカッションにて風祭講評

(川中案の分析グラフを見ながら)松崎元賞の川中さんの作品は、家具の転倒防止という点に着目し、そこにギュッと絞り込んだような作品になっています。空間が大きく取られているので、コミュニティが育まれ易くなると感じました。

建物は空間として面白く、地震が起きたときに納戸の上が家の中での一時的退避場所になり、普段の暮らしでも、いろいろな可能性が考えられます。