目黒公郎賞 『輪島は強しや土までも』

  目黒公郎賞 『輪島は強しや土までも』

輪島は強や土までも_01

輪島は強や土までも_02

ハチコ-OBさんコメント 橋富一博さん・氏川拓郎さん・尾野優太さん

満天の星、一面の千枚田、そして輪島塗。

奥深い文化と自然を持つ輪島では、高校卒業とともに、若者は外へ出ていきます。

「いつもの暮らしをもしもの支えに」とはフェーズフリーの理念ですが、輪島のような地方にとって最大の危機はいつもの暮らしです。反対に、「もしもの支えをいつもの暮らしに」、これこそ地方で求められるフェーズフリーです。

今回注目したのは土蔵、地震被害が集中した一方で、輪島塗製造には欠かせない存在であり、伝統的な町家も土蔵を中心として構成されます。つまりこの土蔵と町屋の強化こそ災害対応だけでなく、産業振興の軸となります。

具体的に、本提案では三つのスケールで考えました。

まず建築材料。輪島塗の技術である木材ヒバの加工、珪藻土の加工、そして漆塗り技術を使って土蔵を強化し、技術活用の幅を広げます。次に建築計画、伝統的な町家は裏に続く通り庭があり、壁量が偏在しています。

提案では通り庭を分節、壁量確保することで耐震性を向上すると同時に、後継者育成に最も適した徒弟制度に合う異世代プランにします。これによって気心の知れた地元出身者だけでなく全国から弟子を取ることが出来ます。

そして配置計画。元来、分業体制のために開かれた空間だった土蔵を中心に町家を人々が通り抜けられるようにします。これによって避難経路を確保すると同時に、町の回遊性を高め、観光地としての魅力を向上させます。

このように、もしもの支えをいつもの暮らしに活かし、何度地震が来ても何度でも生まれ変わる輪島を表す言葉を考えました。

「輪島は強しや土までも」

目黒先生講評

昨今、いろんな災害が頻発しています。地方は特に少子高齢人口減少でどんどん衰退しています。日本の建築はバブルのころには26,7年で作り変えていましたが、もうそんなことはできない。そうすると何が有用かというと、いいところにいいものを作って長くメンテナンスして長く使うことによって地場産業の活性化や人材育成などが、プラスアルファとして実現すると思っています。今回の提案はまさにそれに合致するものでしたので、私が高く評価し、目黒賞をこの作品に、ということにさせてもらいました。